時事通信社 2011.5.17 「ひとときでも家族に」身元不明遺体見送る葬儀社社員
「ひとときでも家族に」身元不明遺体見送る葬儀社社員
東日本大震災では、身元確認ができず、家族に引き渡されないまま火葬される遺体も多い。記号や番号で呼ばれ荼毘(だび)に付される現実に、見送る人たちの胸にもむなしさが広がる。
東京都江戸川区の葬儀社社員小野崎敦さん(34)は、4月下旬から埋葬支援ボランティアとして、津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市に赴いた。市内の安置所から1時間半以上かけ、遺体を岩手県一関市の火葬場へ運ぶ。最終日、そこで4人の身元不明遺体を見送った光景は今でも忘れられない。
小野崎さんと社員もう1人、火葬場と気仙沼市の職員、ボランティアの僧侶しかいない場で見たのは、ひつぎに書かれた「すぱーく84」の文字。一瞬、何の事か分からなかったが、すぐに遺体安置所の施設名「すぱーく気仙沼」と、遺体の通し番号であることに気付いた。
位牌(いはい)の戒名は「新亡 東日本大震災 物故者精霊 霊位」。下に小さく番号が記載されているのを除けば、4人とも同じ。名前ではなく、記号や番号で見送られる現実に「やり切れなさばかりが募った」という。
「遺族が生きているのかさえも分からない。ひとときだけでも家族を務めさせてもらうつもりで合掌した」。がれきが埋め尽くす惨状の中での悲しい旅立ち。「せめて遺族の無事を祈りたい」。小野崎さんは静かに語った。(了)
時事通信社 2011.5.17より抜粋
被災地 [埋葬支援] レポートVol.7 第4次支援部隊として派遣したむすびす(旧アーバンフューネス)社員からのレポート