• 宮城県仙台市拠点に東北地方の報道を行う「河北新報」2011.5.9に掲載
  • 納品された3000本の棺を組み立てていく(宮城野斎場で2011.3.23撮影)
  • 仮設安置所では、届けられた棺に納棺されたご遺体が多数搬送を待つ
  • 斎場のホワイトボードに毎日書き直される棺の納品先と本数(宮城野斎場で2011.3.23撮影)

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「おくりびと」奔走 犠牲者の尊厳大切に

東日本大震災からの復興の裏側で、葬祭業者がおびただしい数の遺体に、一人一人の尊厳を守る処置を施している。亡きがらと向き合い、遺族の気持ちを察しながらの仕事は、並大抵ではない。支えになっているのは、「少しでもきれいにして遺族に届けたい」という職業人のプライドだ。

宮城県利府町の安置所には、検視済みの遺体が次々と運ばれた。溺れて亡くなったこともあり、苦悶(くもん)の表情を浮かべている。髪は乱れ、泥がついている遺体も少なくない。

不慮の死を遂げた遺体に寄り添うのが、葬祭業者の社員たちだ。口や鼻に綿を詰め込み、穏やかな表情に整える。顔にファンデーションを塗ったり、女性には口紅などの化粧を施したりもする。
日数がたつにつれ損傷の激しい遺体が多くなり、十分な処置ができなくなった。それでも仏衣を遺体にかけ、花を供えて死者を弔う。誰にもみとられず亡くなった人々にささげる、せめてもの心遣いだ。

宮城県葬祭業協同組合は、災害時に葬祭用品を供給するとした県との協定に基づき、ひつぎなどを安置所に届けている。納棺は協定には含まれていないが、葬祭業者は自主的に遺体の処置に当たっている。
葬祭業「清月記」(仙台市宮城野区)の事業開発部長西村恒吉さん(37)は「自分たちがやらなければ誰もやらない仕事。皆、プロ意識を持ってやっている」と話す。

それでも、幼いわが子を失って絶叫する母親の姿を見ると悲しみがこみ上げる。社員たちも、いたたまれなさでいっぱいになる。西村さんは「自分にも2人の子どもがいる。母親の気持ちを考えるとやはりつらい」と打ち明け、積もる心労の一端をのぞかせた。
葬祭業「くさかや」(同市若林区)常務の日下利治さん(34)は「何体ものお仏様が並ぶ異常事態だが、いつもの葬儀のように執り行うことを心掛け、機械的にならないように努めている」と語る。

今回の震災では、全国の葬祭業者も応援に駆け付けた。東京都江戸川区の葬祭業「アーバンフューネス」は社員延べ約60人を派遣し、仙台市内でひつぎを組み立てたり安置所に運んだりする作業に携わった。
社長の中川貴之さん(37)は「男性が『妻の遺体が帰ってきただけでも良かった』と話しているのを聞き、今回の震災の恐ろしさを実感した。東京でも震災に備え、葬祭業者と行政の密接な協力関係を築かなければならない」と説明した。

河北新報2011.5.9より抜粋