世を想い、世を憂い、世に願う
亡くなられた84歳のお母様は決して暗いご性格な訳ではありませんが、あまり多くを語らず、同居しているご長女様との日常会話は少なかったそうです。
しかし、晩年始めたご趣味である絵画の作品には、お母様の世の中や社会に対する想い、それらの「愛」が「声にならない声」 として、雄弁に語られておりました。
想う
九州は福岡県ご出身のお母様。
約5年前に先立たれたご主人が現役の頃は、いわゆる転勤族であり、熊本、北海道、名古屋、東京と移り住む事も多くありましたが、晩年の20年ほどは千葉県の山武市に腰を落ち着け、自然に囲まれた土地で静かに暮らしておられました。
「とても姉らしい姉で、よく面倒を見てくれました。」お打合せに参加された故人様の妹様がそうおっしゃり、特に下の妹様への気遣いは具体的にお食事のお世話や着る物の面倒など、ご性格通りあまり口数は多くありませんが、思いやりや愛情に溢れていたのだと、感じる事が出来ました。
そしてそれは、ご家族やご兄弟だけではなく、世の中にも向けられているのだと、この後のお話で感じる事が出来ました。
憂う
お二人のお子様、ご長男様とご長女様は、特に「普通の母」であった、とおっしゃっておりましたが、お話を伺う中、ご趣味である絵のお話になりました。
確かにご自宅のリビングには絵画でいうところの30号サイズ(910mm×727mm)の大きめの絵が2枚飾ってあり、そのうちの一つのタイトルをご長女様が教えてくださいました。
「マスク」
なるほど、近くで拝見すると、実際のマスクを一見無作為に切り、それを貼り付けて、大きなマスクになるように創られていました。
コロナ渦での作品とのことで、世情からイマジネーションを受けたのだろう、との事でした。
「マスク」と書かれた絵画の横にもう1枚。
こちらは一見すると、何が描かれているか分からないもので、二人のお子様も「よく分からない」とのことでした。
すると、遠方からお見えになっていた故人様の妹様が口を開かれました。
「姉が分断って言ってました。」
分断、作品の裏にはタイトルと共に「終わりの始まり」とも書いてあります。
さらに、妹様がこちらの作品は昨年考案し、今年の5月に完成された、ともお教えいただきました。
なるほど、おそらくは「戦争」がテーマになっているものとお見受けしました。
故人様の妹様、つまりはお子様方からしたら叔母様のお言葉にお二人とも「へぇ、知らなかった」と言葉を紡ぎます。
そのご様子から、特にご長女様は同じ屋根の下にいらっしゃっても、必要以上に互いが干渉せず、しかし親子として成り立つ関係性を保ち生活をしていたのだと感じる反面、言葉を用いずとも保てる関係性の素晴らしさと、そしてそれでもやはり少しだけ勿体無い、特に作品の事などを語らずに逝かれた事への、お節介ながら寂しさを感じました。
だからこそ。
願い、そして祈る
時事問題に目を向け、近年のコロナ渦や戦争の問題を憂い、そしてそれを言葉ではなく、趣味を活かした絵画に込める。まさに芸術家としての側面をお持ちのお母様。
そんなお母さまだからこそ、その想い、憂い、願いをご葬儀の参加される皆様、特にお子様方にも感じていただき、故人様の冥福を祈るのと同時に、「普通の母」だからこそ願う、世の中や異国の地の平和、そんな故人様の祈りも感じていただきたく思いました。
それこそが、故人様のイノチを未来に紡ぐためのご葬儀になるのではないかと思い、絵を飾り、皆様にとっての「考える時間にしましょう」と、そのようにご案内をさせていただきました。
担当エンディングプランナー 植竹 祐公
あまり「芸術」というものに造詣が深くない私でも、故人様の作品とタイトルを伺うだけで心に響くものがありました。
作品を観た事が無いご親戚様にも同様かそれ以上に故人様の祈りを感じていただけたなら幸いです。
内容とお写真は、ご家族・会社様のご了承を得て掲載させていただいております。
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